保育士を辞めたいと悩む方は、たくさんいます。
保育士は、目の前で子どもの成長が実感でき、かつ女性の社会進出のサポートにもなるヤリガイと社会的意義がある仕事です。また現在はどこの保育園も人手不足ですので、結婚・出産で一旦辞めた人でも復職しやすく、ライフワークとして働けるというメリットもあります。
ただその一方で、離職率は非常に高いという課題があります。1年以内の離職率は25%、3年以内には約半数が離職してしまいます。また保育園の種別では、公立の保育園の離職率が7.1%に対し、私立の保育園の離職率は12%と私立の保育園の離職率は公立の1.6倍というデータもあります。(※参考資料/厚生労働省 保育士等に関する関係資料)
本記事では、「保育士を辞めたいと感じる理由」「辞める前に試したい改善点」「試したい対処法」など、離職の現状を正確に把握した上で、辞めずに前向きに働ける方法について解説します。
目次
1. 保育士を辞めたい理由1位は人間関係
C子
今年のうちの園は、退職者0なんです!
それはとてもいいことだね。
B子
A子
離職率が低い園は人間関係や待遇に力をいれていることがわかるわ。この記事では、保育士の離職理由や離職を防ぐ改善方法などを紹介しているわよ。ぜひ、参考にしてみてね。
最近では男性保育士の比率が増えてきていますが、それでも全体の3~4%で、やはり圧倒的に女性の保育士が大多数というのが現実です。
そんな中「辞めたくなる理由」の1位は、「人間関係」です。保育士を辞めたくなる人間関係の悩みについては、環境ごとに異なる部分もありますので、詳しくみていきましょう。
1-1. 先輩との人間関係の悩み
先輩にとっては「ちゃんとできて当然」のことでも、新人にとっては「全てのことが初めての事」です。先輩が「私も新人の頃はそうだった。私は先輩にきつく言われて嫌な思いをしたので、私はできるだけ丁寧にアドバイスしよう」という姿勢の先輩もいますが、やはり厳しく指導してしまう人もいます。
時間がずれて多くの関係者に迷惑がかかるものや、子どもの命の安全に関係するミスは深刻な問題ですが、業務が慣れるまでの自分の小さなミスに対するベテラン保育士の指導については、有難く受け止め、そのことで必要以上に自分を深く追い詰めないようにしましょう。
1-2. パート保育士との人間関係の悩み
多くのパート保育士は、かつて保育士として働き、現在は結婚・出産して子育てと仕事を掛け持ちしているママさん保育士です。
パート保育士の場合、どうしても子どもの生活が優先になってしまいます。例えば、子どもが急に熱が出てしまった場合、通常の業務を早く切り上げることもあるかも知れません。
そういった事態が起こってもトラブルにならないように、常にコミュニケーションを図りながら連携し、仕事の連帯意識を共有できるようにしておくことが大切です。
2. 保育士辞めたい理由2位は給与の安さ
保育士を辞めたい理由の2つめは、「保育士は、その責任や仕事量と比べると、給与が安い」というものです。
近年は、待機児童問題の重要な課題は「保育士の待遇改善」だという認識が国や自治体にも広がり、各種支援制度が徐々に整備されつつあります。しかし残念ながら、保育士の離職率を減少させるには至っていません。
保育士の仕事は、とにかく忙しいといわれています。「ゆっくりお昼を食べる時間がない」「休憩時間がない」「連絡帳の記入など雑務が多すぎる」といった声が多い状況です。
また「小さな子どもを預かる」という責任の大きい仕事の割には、お給料が安いという不満もあります。私立と公立で多少異なるものの、保育士のお給料の平均は24.45万円で、税金や保険料を引いた手取りは20万円前後と考えられ、この待遇部分の不満も保育士が辞める大きな原因になっています。
3. 保育士を辞めたい理由3位は保護者との関係
保育士の仕事には、「親の代わりに子どもの成育を担う」という重要な役割があります。逆に子どもを預けている保護者にとってはは、保育士は「自分の代わりに子どもを育ててくれている人」になります。
日々の出来事や子どもの成長具合を、保護者との円滑なコミュニケーションで共有されて良好な関係を築けていればいいのですが、世の中にはご自身の家庭の教育方針や躾を保育士に押し付けようとする保護者もいます。
今世間で問題になっているモンスターペアレンツといわれる保護者が、自分が担当しているクラスの子どもの親にいると、精神面でかなり負担を強いられる可能性があります。そういった状況では、まず主任や園長先生に相談しましょう。
他の問題でもいえることですが、決して自分一人で抱え込まずに、どんどん他人に相談することが大切です。そうすることで有効なアドバイスをもらえるだけでなく、園全体としても情報が共有でき、その状況に最適な対処をしやすくなります。
4. 保育士を辞めたい理由4位は休暇を取得しにくさ
保育士の仕事の忙しさには、大きく2つの原因があります。それは、「業務量の多さ」と「保育士の人数不足」です。
保育士の仕事には、子どもと触れ合うだけでなく、事務作業や毎月のイベント、季節ごとのイベント、研修などがあります。そういった仕事の多さが、残業や休日の仕事につながっています。
また保育士の人数不足によって、どうしても一人当たりの仕事量が多くなってしまい、休暇を取得しにくいという現状があります。厚生労働省の調査によると、保育士全体の31.5%、つまり約3人に1人が「未消化休暇の改善」を希望しているというデータもあります。
保育士資格を持つ女性の積極的な復職支援など深刻な保育士不足が解消されない限り、保育士がきちんと休暇を取得する状況にはなりにくく、それが離職につながるという悪循環が続いています。
5. 保育士辞めたい理由5位は園の方針と合わない
保育士を辞めたいと思う理由の一つに、「現在働いている保育園の方針は、自分に合わない」というものがあります。保育園には、「英語重視の教育」「音楽や運動などを教育に積極的に取り入れている」といった独自の方針を持っているところがあります。
また、「子どもの個性を伸ばす」「子どもの能力は褒めて伸ばす」「名前で呼び合って先生と子どもの関係を作り上げる」といった教育方針を実施している保育園もあります。
子育てに多様性があるように、保育園にも様々な教育スタイルがあります。そういった園の教育方針が自分の考え方と異なると、やはりストレスになってしまいます。
現在働いている保育園の教育方針が自分に合わない場合は、自分の考え方に合う保育園を探して、転職した方がいいかも知れません。
保育施設には、英語や音楽を重視している場合や日常保育の中で、学習や運動を取り入れている園などさまざまな特色があります。また、子どもと保育士の関係制を作り上げるうえで「名前で呼び合う」、「否定的な言葉を子どもに一切使わない」など独自の保育方針をもつ施設もあるでしょう。
園の保育方針に賛同して活動を行うことができる保育士さんがいる一方で、「自分が望んでいた保育ができていない」と働いている園に対して不満を抱くケースもあるようです。
多様な子育て観があるように、保育士さんもそれぞれの価値観をもち、子どもと携わっていることでしょう。
働いている園の保育方針が合わない場合に、自分が希望する保育が可能となる園に勤務したいと、転職を考える方もいるかもしれません。
6. 【改善方法紹介】保育士を辞めたいと思った時の改善方法
保育士を辞めたいと思った時、まず今の状況でできることを試してみましょう。そうすることで、人間力がつき、自己成長できます。
6-1. 人間関係の改善
現在働いている保育園の同僚や先輩との人間関係で悩んだ場合、「世の中にはいろんな人がいる」「人はそれぞれだから」と自分なりに割り切って接するのも効果的です。
仕事で組み相手は、学生時代のように気の合う人ばかりではありません。逆に仕事としてちゃんと機能していれば、文句をいわれる必要もないのです。
自分としてはどうしても苦手意識が抜けない相手には、常に敬語で接し、相手を敬いながら適度な距離感を保って仕事に取組みましょう。
6-2. 給料改善(キャリアアップ)
今のお給料をアップする一番の方法は、キャリアアップです。具体的には、クラス担任やリーダー、主任といった役職になることで、役職手当や管理職手当がつき、給料アップできます。
ここで重要なことは、現在働いている保育園の「人事評価の基準」を把握することです。また過去に昇進した先輩の事例もさりげに聞いておけば、昇進・昇給の道筋が見える可能性があります。また優れたパフォーマンスは、ボーナスにも影響がありますので、収入アップにつながります。
また最近保育士の処遇改善施策として、新設された役職に就くと、月額が最大で4万円アップする制度ができました。こういった制度も、是非積極的に活用しましょう。
6-3. 仕事量の改善(効率化)
保育士が辞める大きな理由である「仕事量の多さ」を解消する方向性は、「事務作業の効率化」です。このポイントは、「段取り」と「パターン化」です。では具体的にみていきましょう。
<業務をリスト化してみよう>
年間単位でいつどんな業務があるのか、1日単位ではやるべきことがどれだけあるのかを具体的に書き出して、把握します。この作業の効果は、業務の再認識とパターン化が図れることです。
特に1日の仕事の流れは、共通部分はパターン化することで効率化が図れます。スマホのメモ帳などを活用して、チェック項目を用意しておけば、うっかり抜け忘れることもなくなります。
<業務の連携を促進しましょう>
仕事量の多さは、自分で抱えこんでいるケースが結構あるものです。他の保育士と協力し合うことで、残業や持ち帰り仕事を軽減できます。
<制作業務はパターンを活用する>
連絡帳に書く文章の雛形や、壁面装飾、紙芝居などは、無料サイトからダウンロードすることで、短時間で高い品質を実現できます。最近では、スマホやタブレットを業務の効率化に活用する例も増えてきています。他の保育園のそういった事例を調べることも、かなり参考になります。
7. 【8つの対処法】保育士を辞める前に試したい8つのこと
現場での人間関係や仕事量の多さに悩んで辞めたいと感じても、一旦気持ちをリセットして状況を改善できるアクションを起こしてみましょう。
①一人で悩まず、同僚や先輩に話をしてみる
どんな些細なことでも他人に話をしてみることで、アドバイスや意見がもらえ、解決のヒントが得られることがあります。また相談することで、人間関係の絆が深まることもあります。
②保護者のクレームには謙虚な姿勢で対応し、上司に相談する
保護者から理不尽なクレームが来たら、まずは謙虚な姿勢で、丁寧に接しましょう。同時にトラブルの可能性があるものは、上司にすぐ相談し、情報共有を図りましょう。
③苦手意識のある人とは適度な距離を保ちましょう
人は誰しも、やりやすい人とやりにくい人があるものです。そういうものだと割り切って、苦手な人との人間関係は適度な距離を保つことで、ストレスをためないようにしましょう。
④仕事は効率化して軽減しましょう
スマホなど自分のIT機器も活用して、できるだけ仕事の効率化を図りましょう。
⑤年間の仕事と1日の仕事をリストアップしましょう
年間行事の流れを把握し、また1日の仕事の流れをリストアップしましょう。特に仕事の種類を分け、同時にできるものはないか、他人に振れるもの、簡略化できるものはないか等を検討しましょう。
⑥タスクごとに必要な時間を設定する
まずタスクを書き出し、それぞれにかかる時間を割り当てます。特に時間がかかっているタスクに関しては、簡略化・パターン化・他の人との共有等を検討しましょう。
⑦資格手当や役職手当を目指しましょう
「保育士等キャリアキャップ制度」を活用し、給与の低さを改善しましょう。以下のように給料アップが図れます。
・副主任保育士/40,000円アップ
・専門リーダー/40,000円アップ
・職務分野別リーダー/5,000円アップ
⑧余裕のある時期に休暇を取ろう
年間の中で、業務に余裕がある時期を選んで、休暇を取得しましょう。
8. 辞めたいけど、保育士を続けたい!
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